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【イベントレポート】スタートアップが後悔しないための上場準備対策・ インセンティブプラン:野村證券×コタエル信託
信託型ストックオプションを中心としたインセンティブプランの開発・提供を行うコタエル信託は、「組織を強くする」、「役職員や社外協力者のモチベーションをあげる」などのテーマでさまざまなイベント、セミナーを開催しています。
その一つが 2024年1月30日にひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム後援のもと開催した、野村證券株式会社との共催セミナー「スタートアップが後悔しないための上場準備対策・インセンティブプラン」です。
スタートアップにとってIPOは失敗できないイベントの一つ。資本政策の策定、経営管理体制の整備など準備項目は多岐にわたります。また準備を進めるにあたっては、CFOをはじめとする財務・経理といった管理部門の人材、加えて事業を更に成長させることができる優秀な人材の採用が重要です。それでは、IPO直前でつまずかないためにスタートアップはどんな準備をしておけばよいのでしょうか。
本セミナーでは、野村證券の堤周二氏が「最近のIPOマーケット環境を踏まえた上場準備のポイント」を、コタエル信託の布施弘之が「優秀な人材を採用するためのインセンティブプラン」を解説しました。
本セミナーはひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム後援のもと、神戸市が設立したANCHOR KOBEにて開催されました。
IPOの準備で押さえておきたい5つのポイント
まず、野村證券の堤氏が 2023年のIPOマーケット環境について紹介しました。
2023年のIPO社数は96社と、100社には達しないものの直近10年間で見ると2021年の125社に次ぐ数字となったこと。申請期の業績予想が赤字の企業は全IPO企業の1割前後と例年並だった一方、直近では投資家の赤字企業への許容度は2021年以前の水準から低下していること。東証グロース市場250指数が大幅調整し、IPOには厳しいマーケット環境であったことなどを統計データを交えつつ共有しました。
堤 周二(つつみ しゅうじ):1991年大阪府立大学(現大阪公立大学)卒業後、野村證券入社。東京、大阪を中心に長年に亘りIPO支援業務に従事。IPO実務をサポートする公開引受部、IPO営業の双方の経験を有し、現在は兵庫県以西(沖縄県を除く)のIPO意向企業をサポート。
また「スタートアップの選択肢は増えている」と語り、インパクトIPO(企業が社会性と事業性を両立し、社会に与えるポジティブな影響の測定とそのマネジメントを適切に実施していることを示しながらIPOを実現すること)の事例、M&Aと上場の両方を実現した事例を取り上げました。
こういった最近のマーケット環境を踏まえ、少しでもIPOを意識するのであれば覚えてもらいたいポイントが5つあると堤氏は続けます。
1 つ目は会計処理。「特に収益や費用の認識のあり方について、早いうちに監査法人と相談することを推奨します。『監査法人と早いうちに契約なんかできないよ』と心の中で思っている人もいらっしゃるでしょう。そういう場合は、候補の監査法人の担当者と早めに話をして、監査法人がついてからも変わらない会計処理を行えるようにしておきましょう」。
2 つ目は最低限の組織体制を理解しておくこと。「社長と事業担当役員と管理担当役員で常勤役員3人。この体制をまず目指すべきかと思うのですが、社長が事業担当役員を兼ねていて、管理担当役員はいない。このようなスタートアップもいらっしゃるのではないでしょうか。いまは良くても、目指すべき最低限の組織体制は知っておいたほうが良いと思います」。
3つ目はどのように意思決定したかを記録しておくこと。「組織体制に関連しますが、取締役会がない企業もあるでしょう。あとでどのように意思決定をしたのか振り返れるよう、メモでも良いので記録を残しておくことをおすすめします」。
4つ目は労務を管理すること。「IPO間近になると大なり小なり問題になります。早めに社労士(社会保険労務士)と話をしてください」。
そして、5つ目はIPOのマーケット環境を理解していくこと。「2020年半ばから2021年後半にかけて1,000ポイントを超えていた東証グロース市場250指数は、現在700ポイント台となっています。マーケット環境は資金調達の環境でもあります。私がVC(ベンチャーキャピタル)であれば、時価総額が100億円の会社に対しては1億円出資できるでしょう。ただ、環境が悪化し、時価総額が50億円や30億円にしかならないのであれば『なんとか5,000万円だったら出資できるかな? どうだろう?』こう思うわけです」。
インセンティブプランで貫くべきはフェアネス
続いて、コタエル信託の布施が「優秀な人材を獲得するためのインセンティブプラン」について解説しました。
布施 弘之(ふせ ひろゆき):1988年慶應義塾大学卒業後、国内証券会社で10年以上専門法人業務に従事。その後BNPパリバ証券法人部長、ドイツ証券ディレクター、UBS銀行ディレクター等を歴任し、2018年よりスタートアップにて大手総合商社との暗号資産開発に参画資本政策も担う。2022年にコタエル信託入社。
2022年に「スタートアップ育成5か年計画」が策定され、スタートアップ・エコシステムの創出やオープンイノベーションの推進に関する具体的な方針が示されました。国を挙げてのスタートアップ支援が加速するなか、鍵となってくるのが優秀な人材の採用です。
米ギャラップ社が2023年に公表した調査によると、日本企業における「やる気あふれる社員の割合」はわずか5%です。そういった環境のなか、優秀な人材を採用し、モチベーションを保つためには何が重要なのでしょうか。布施は3つあると語ります。
「まず1つ目は人事制度を整え、安心して働ける環境を作ること。2つ目は客観的な評価制度とインセンティブプランを設計すること。貢献に応じて待遇の優劣をつけ、旧来の減点主義評価ではなく加点主義評価を取り入れていきましょう。3つ目は会社にフィットしない人材には早期に次のキャリアの道を開くこと。数年で事業の規模が変わるスタートアップでは、どんなに優秀な人材でもフィットしなくなってくるケースは存在します」。
インセンティブプランには金銭・株式・ストックオプションが主に用いられます。事業への積極的な投資を行う必要のあるスタートアップでは、賞与をはじめとする金銭報酬と併せ、手元の流動性を厚くしつつ株式上場まで従業員が頑張るための動機を作ることができるストックオプションが多く用いられています。
ストックオプションの中でも、期待値に対して交付されるのが「直接発行の税制適格ストックオプション」であり、貢献度に応じて交付されるのが「信託型ストックオプション」であると布施は紹介します。
「直接発行の税制適格ストックオプションは将来の貢献期待値に対し交付されるため、受け取ったあと働かない、いわゆるぶら下がりの役職員が生まれてしまう可能性があります。信託型ストックオプションであれば貢献度を見てから交付できるので、本当に頑張った人に報いることができます。一方で入社時にストックオプションを受け取ることでやる気を出す人もいますので、『金銭報酬』、『直接発行の税制適格ストックオプション』、『税制適格に対応した信託型ストックオプション』をどのように組み合わせるかがポイントとなります」。
布施は繰り返しこう説明します。
「インセンティブプランを導入する場合には、客観的で公正な人事制度・評価制度も併せて検討することが肝要です」。
たとえば、成果を出すがオーナーとはほとんど接点がない Aさんと、成果はあまり出さないもののオーナーと親密なBさんがいたとします。オーナーの恣意的な判断でBさんに多くのストックオプションを付与してしまった結果、Aさんが退職してしまうのならかえって組織に悪い影響をもたらしてしまいます。
「特にストックオプションを活用したインセンティブプランの場合、適切ではない個数を役職員が受け取ってしまうと既得権化し、成果を追わなくなる可能性があります。社内に不協和音が生じることも考えられます。まずは一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか」と語り、セミナーを締めくくりました。
これからもコタエル信託は、自治体や金融機関等との協力・連携を通じ、スタートアップ業界の発展に寄与できるよう邁進してまいります。
セミナー終了後は参加者のみなさまと交流しました。
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