コタエルコラム
#信託型ストックオプション
#税制適格ストックオプション
#ストックオプション
米国のオプションプール制度(発行枠制度)と信託型ストックオプションの違い
近頃、信託型ストックオプションの仕組みと米国のストックオプション制度(オプションプール)が比較される機会が多くなりました。
この記事では、信託型ストックオプションにおけるオプションプール(新株予約権の交付枠)の考え方と米国のオプションプール制度の違いを解説いたします。
米国のオプションプール制度とは
米国のオプションプール制度は、概ね以下のような制度になります。
- 米国では、資金調達のラウンドごとにストックオプションの交付制度の内容を定めたプランが策定され、オプションプール(新株予約権の交付枠)も見直される
- オプションプールのサイズ(交付できる新株予約権の総量)に法的な制限はない
- プランの策定後、新株予約権を付与する場合には付与対象者と個別にストックオプション契約を締結し、当該契約において、付与日・行使価格・対象となる株式の総数や、適格ストックオプションか否か等の条件を定める
なお、新株予約権の権利行使価額がオプションプール設定時の株価に固定されるかのような説明が行われることがありますが、それは誤りです。
税務上のデメリットを避けるためには、新株予約権の権利行使価額を新株予約権の付与日における株式の公正価格以上に設定しなければならず、新株予約権の付与毎に株式時価を計算し直す必要があります(26 C.F.R. § 1.409A-1(b)(5))。
ただし、通常利用される独立評価人によるバリュエーションの場合、バリュエーションに大きな影響を与える資金調達等のイベントがなければ当該バリュエーションは最長12ヶ月間有効であるため、策定後1年間は設定時の時価を権利行使価額として使用することに支障がないとされます。
日本のストックオプション制度における会社法の制限
日本の会社法では、原則として発行会社の株主総会が新株予約権の募集事項を決定するのですが、一部の募集事項のみ取締役会(取締役会非設置会社では取締役)に委任することができます。またこの場合、委任の決議が行われた日から割当日まで1年以内である必要があります(会社法第238条・第239条)。
なお、オプションプールのサイズに法的な制限はなく、プランを策定する必要も特にありませんが、権利行使価額等の新株予約権の内容は株主総会から委任できないことから、税制適格ストックオプションにおける時価要件や、有償ストックオプションにおける公正価値の算定との関係では、時価に疑義が生じる場合にはその都度算定するのが原則となります。
実務上は直近取引事例から6か月以内であればその時価を援用しますので、いわば最長6か月間はバリュエーションが有効であると考えられます。そのような点では両者ともよく似ている制度であり、我が国の会社法が米国のオプションプール制度に明確に劣っているとまでは言えないのが現状であるでしょう。
信託型ストックオプションとの違い
当社が提供する信託型ストックオプションは法人課税信託という仕組みを利用しております。これは委託者(オーナー経営者・株主等)が時価発行新株予約権の贈与時に生じるであろう課税について、あらかじめ納税を済ませておくことにより、将来受益者に財産を引き渡す際の課税が発生しないとする制度です。
米国のオプションプール制度と比較を行うと、以下のような違いがあります。
- 交付ガイドラインを作成しガイドラインに沿った適切な交付が行われる必要があるが、交付ガイドラインは受益者へ信託財産(新株予約権等)を交付する前までに策定をすれば良い
- オプションプール(新株予約権の交付枠)のサイズ(信託に預けておく信託財産の総量)に制限はない
- 受益者指定の指図を行うことで、導入時に発行された新株予約権を権利行使価額・取得簿価固定の状態で受益者に交付することが可能。ただし、実務上は新株予約権を交付する場合、新株予約権の権利行使に関する覚書等を締結するケースがほとんどである
米国のオプションプール制度と日本のストックオプション制度の比較表
以下に米国の制度と信託型ストックオプション、税制適格ストックオプションの制度を比較表にまとめました。
米国のオプションプール制度と信託型ストックオプションは、オプションプールを用意できるということから類似点が多い部分もありますが、運用上の制限等が異なるため、比較検討をされる際には顧問税理士・会計士の方等とも連携の上、ご検討いただけますと幸いです。
アメリカ | 日本 | ||
---|---|---|---|
信託型SO | 税制適格SO | ||
ストックオプションプールの上限枠 | なし | なし | ー |
オプションプールから取崩しながら交付 | ラウンドごとに設定するプールから可能 | 取崩し交付タイプ※ならば、信託組成時のプールから可能 | 不可 |
付与・運用ルールの策定 | ストックオプション・プランの作成時 (ベスティング条件など一部後決め可) | 後から決められる | 不可 |
権利行使価額 | SO付与時の時価が行使価格 | 信託組成時の行使価格 | SO付与時に設定した行使価格 |
取締役や社外スタッフへの交付 | 非適格(NQSO)で可能 | 可能 (一部制限がある場合あり) | 条件あり |
退職時の扱い | 退職後でも一定期間は有効なことが多い | 取崩し交付タイプ※ならば、 対応も可能 | 退職時の扱いはSOの設計次第 |
※「取崩し交付タイプ」は、当社および当社グループにて特許取得済の当社独自スキームです。
類似商品の勧誘に
ご注意ください。
昨今、当社の提供する信託型ストックオプション「時価発行新株予約権信託®」に類似する商品の導入を勧める業者・専門家が増えております。信託型ストックオプションであるオプションプール信託®や時価発行新株予約権信託®、1円ストックオプション信託®のほか、有償ストックオプション信託®、譲渡予約権信託®、コール・オプション信託®は当社グループの登録商標であり許諾なく第三者が使用することはできません。
信託商品は、その設計により想定される結果が大きく異なる場合があります。類似の商品の提案を受けた場合や登録商標の商品を騙った勧誘を受けた場合には、法律上・税務上の課題がクリアされているかどうか、十分ご注意ください。